VUCAの時代に、音楽が子どもたちに必要な理由

私は専門的にピアノを学んだ後、多くの音楽に関わる仕事をしてきました。
特に合唱やピアノ講師としての現場では、4歳から80代まで様々な年齢の方々と、16年以上にわたり多くの音楽経験を重ねてきました。
その長い時間の中で、何度も目にしてきた光景があります。

それは、楽しくワクワクする時間に、人の目の輝きが変わる、ということ。
その瞬間こそが「生きている」実感——そう強く思ったのです。


AI時代に、何が変わるのか

AIやテクノロジーの進化は、私たちの社会を急速に変えています。
膨大なデータを瞬時に処理し、正確に反復する
——そうした作業はAIが得意とするところです。
これまで「正解を覚える教育」に大きな価値がありましたが、
その価値は今、大きく変わろうとしています。

では、AIにはできないことは何でしょうか。

それは
ゼロから何かを生み出す創造性
人の痛みに寄り添う共感力
感情を持って人とつながる力
そして答えのない問いに向き合う力
——つまり、人間の「心」から生まれるものです。

AIが進化すればするほど、逆説的に、人間にしかできないこの力の価値がますます高まっていく。
そう感じています。


1冊目との出会い

時代の変化を肌で感じていた頃、一冊の本に出会いました。

AI時代最強の子育て戦略

大内孝夫著『AI時代最強の子育て戦略「ピアノを習っています」は武器になる』です。

この本の中で、「非認知能力」という言葉に出会いました。
IQや学力テストのように数値で測れる「認知能力」に対して、それでは測れない力——粘り強さ、共感力、自己管理力、協調性といったもの——が「非認知能力」です。
まさにこの「非認知能力」こそが、AI時代を生き抜くために重要だと語られていました。

そして本の中で、指揮者でピアニストでもあるダニエル・バレンボイムのこんな言葉に出会いました。

  

「音楽に勝る教訓はない」

テンポ・リズム・テクニック・表現——それぞれが統合されて初めて音楽になる。統合されて初めて、音は音楽になる。

この言葉が深く刺さりました。
音楽は「武器」ではなく、「人生の友達」になりうる——そう強く感じた一冊でした。


2冊目との出会い

さらに、保育園での音楽指導のご縁にも恵まれた後、現場を経験しながら勉強を続ける中で、もう一冊の本に出会いました。

OECD Education2030プロジェクトが描く教育の未来

小学校で音楽の先生をしている大学の同級生がいます。
当時彼が指導する小学校の合唱団の伴奏を私がしていました。
共に時間を過ごす中、彼の子どもたちに対する接し方、導き方に音楽面だけに止まらず、感銘を受けていました。
その友人から「VUCA」という言葉を教えてもらい、これからの教育全体を見渡すには、この本が良いよ、と薦められた本です。

白井俊著『OECD Education2030プロジェクトが描く教育の未来』

VUCA(ブーカ)とは
volatile(変動性)
uncertain(不確実性)
complex(複雑性)
ambiguous(曖昧性)
の頭文字を取った言葉で、
「予測困難で不確実、複雑で曖昧」な時代になることを意味しています。
2030年は、よりVUCAな時代となることが予想されています。

またこの本を通じて、OECD Education2030プロジェクトが、2030年の子どもたちに必要な力として挙げている「4Cスキル」を知りました。

4Cスキル

  • 批判的思考(Critical thinking)
  • コミュニケーション(Communication)
  • 協働(Collaboration)
  • 創造性(Creativity)

知識の暗記ではなく、「どう学ぶか」「どう生きるか」という力こそが、これからの時代に求められているのです。


2冊が導いた結論

2冊の本を通じて、私の中でひとつの確信が生まれました。

AIやテクノロジーの進歩が加速する中、先の見えない未来が待っていると感じます。
だからこそ、人間にとって一番大切な「心」を大事にしたい。
テクノロジーの進化で心までカバーできる日は、すぐには来ない、いや、永遠に来ないかもしれません。

人が人生を生き抜くために必要なこととは?

経験や体験の積み重ね、そこから生まれる感情、人と人との関わり。
これらすべてに繋がる、人としての「心」ではないかと思います。
その心をもってして「生命」をまっとうし、次の世代へ繋ぐ。

自分を愛し、人を信じ、人とつながる——その感情に深く触れるもののひとつが、「音楽」だと、強く思います。

VUCAの時代を生き抜くのに、音楽は人の心を動かし、時に困難を生きぬく力を与えたり、疲れた心を癒してくれたりする力があると確信しています。


脱線の中にある人間らしさ

AIは効率よく、正確に、無駄なく動きます。
だからこそ人間に求められるのは、その逆——「余白」や「脱線」の中にある豊かさではないかと思うのです。

正直に言えば、これは私自身への戒めです。
普段の子育てでは、これがなかなかできない。
余白よりも効率、脱線よりも時間短縮が日常になってしまっています、、
本当に反省すべき点です、、

自分の反省は棚に置きつつ、、、
現場ではこんな瞬間があります。

⭕️レッスンに来るたびに、私の服装をじっくりファッションチェックしてくる子。
その後みんなでファッショントークが広がる(ママのこと、みんなよく見ています笑)

⭕️進めたいプログラムがあるのに、お菓子のリズムを創作する活動で「もっとやりたい!」とアイデアが止まらなくなった子どもたち。

⭕️1回で終わらせるつもりだったプログラムに「もう一回!」とリクエストが入る瞬間。

大人の目線で見れば、「脱線」であり「非効率」かもしれません。
でも、その瞬間にこそ、子どもたちの本物の興味、本物の感情、本物の創造性が宿っています。

この「余白」を大切にすること。
それはAIには決してできない、人間同士だからこそ生まれる時間です。
少なくともレッスンでは、こういう時間を大切にしたいと思うのです。

だからこそ、音楽を

VUCAの時代——先が見えない、答えのない時代だからこそ、子どもたちには「心」を育てる基盤が必要だと思います。

知識でもなく、技術でもなく。
自分を愛し、人を信じ、人とつながる力。人間の溢れる愛の中でしか育たない心です。

効率では測れない「余白」の中で、子どもたちは心を育てます。
脱線の中に、本物の好奇心が宿ります。

小さなときめきが、やがて人生の扉を開く力になる
——私はそう信じています。
その感情に触れる入り口のひとつが、音楽。

AIがどれだけ進化しても、人間の「心」だけは、人間にしか育てられない。
そんな想いを胸に、世の中の流れに逆行した人の心に向き合う時間を、私も忘れないようにしていきます。

コンサートの様子

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